『フラガール』

李相日『フラガール(公式サイト)
【評価】★★★★★

昭和40年、本州最大の炭鉱・常磐炭鉱では大幅な人員削減が迫り、かつての基幹産業としての隆盛は見る影もなくなっていた。そんなまちを救うため、この北国に“楽園ハワイ”を作り上げるという起死回生の一大プロジェクトが持ち上がる。目玉はフラダンスショー。盆踊りしか知らない炭鉱娘にフラダンスを教えるため、東京からダンス教師が呼び寄せられた。元花形ダンサーで気位の高いその女性は、最初は炭鉱や素人の炭鉱娘たちを馬鹿にするが、やがて少女たちのひたむきな熱意に、忘れかけていた情熱を再燃させる。ひとりひとり厳しい現実を抱えながらも、炭鉱娘たちは友情を支えに強く美しくフラダンスの真髄を体の中に染み込ませていく。そして――。
常磐ハワイアンセンター(現:スパリゾートハワイアンズ)の誕生を支えた人々の奇跡の実話、感動の映画化!

感動しました。とても良い映画だったと思います。


この手の感動モノには、テンポが悪くて話が冗長に過ぎるもの、登場人物の心象描写に納得がいかないものが間々見られますが、本作はそのようなところは一切なし。短い時間で一つ一つの場面を丁寧に描ききっており、そのことが作品にテンポ・スピード感をもたらしています。
みんなが何かを抱え、でも困難に立ち向かう勇気を振り絞って一所懸命に生きている。「未来をあきらめない」。作品のメッセージが真っ直ぐに伝わってきます。


一見すると「旧態依然とした山の男達」と「新しい世界を切り開こうとする女達」という構図に見えますが、たぶんそういう受け通り方は正しくなくて、「時代の変化と世代間の葛藤」といった何時の社会にも存在するものを描きつつ、それでも「変わる(変える)勇気」を持ち続けなきゃならない、そんなことをこの映画は訴えたかったんじゃないでしょうか。


俳優陣も個性的で良いですね。最後に炭坑に入っていく紀美子の兄(豊川悦司)の笑顔は何とも言えず清々しい。小百合(山崎静代)の「踊らせてくんちぇ!」には泣きそうになってしまいました。松雪泰子蒼井優は言うに及ばず。ハワイアンセンター設立にかける吉本部長(岸部一徳)の情熱がもっとビビッドに描かれていればなお良かったと思います。


アレを読んだ後のイヤな感情を吹き飛ばしてくれました*1。3月にはDVDが出るとのこと。あんまり映画を手元に置くことはしない質なのですが、ちょっと考えてしまいます。さてどうするか。

*1:でも普通は同じ日に鑑賞するもんじゃねえよなww