映画『アイルトン・セナ 〜音速の彼方へ』

映画『アイルトン・セナ 〜音速の彼方へ』(公式サイト)
久しぶりに映画を観てきました。
セナが死んだとき、冗談半分で「おじいちゃんになった彼は想像できないから、若いうちにレースで逝ったってのは良かったのかも知れない」と思っていました。しかし、自分がその歳を越え、この映画であらためて彼の足跡と、(当時は中国にいたので)始めてまともにイモラのあのレースを見てみると、ちょっと違う感想を受けました。
この映画では、冒頭とラストで、彼は(F1の世界に入る前の)カートの時代が一番楽しかった、と言っています。しかしその後、プロストとの確執、F1界の政治、電子制御システムの導入によるレースの質の変化など、純粋にレースを楽しむことを妨げる要素がたくさん出てきて、だんだん笑顔が少なくなっていくというのがよく分かります。最後の年は思うに任せないマシンのセッティングに苦悩し、そして前日のラッツェンバーガーの事故死のショックを引きずってグリッドにつくその顔は、「乗りたくない」という雰囲気が滲み出ているようでした。
そう考えると、あれだけ好きだったレースをおそらく人生で一番楽しめない心理状態のまま亡くなったってのは、これ以上ないくらい悲しい死に方なんじゃないか、と思います。
レースの映像がメインですが、それに加えてプライベート映像と、ブラジルでの彼の人気ぶりもうかがえるようになっています。まさに英雄。いかに愛されていたかが分かります。母国GP初優勝のシーンは感動的。92年のモナコの映像がなかったのが残念でした。