『劔岳 点の記』

映画『劔岳 点の記』(公式サイト)
【評価】★★★★★
「点の記」(テンノキ)とは、測量の基準となる三角点の設置・測量の記録のこと。明治40年、日本地図完成のため、前人未踏の劔岳に挑んだ陸軍測量部の柴崎芳太郎らの物語。
先に見た『マン・オン・ワイヤー』とうって変わってこちらは明確な使命を持った人々の物語。しかも、測量と劔岳初登頂を果たすことで威信を示そうとする陸軍上層部の命令により実行に移されたこの計画は、「ただ渡ってみたい」という綱渡りとは真逆に位置するといって良いでしょう。自分で自分に使命を課す人もいれば、他人から(理不尽な)使命を課せられる人もいる。どちらにせよ、やり遂げるってのは大事だな、と思いました。

物語にはさまざまな人間模様が織り込まれています。家族との絆、「死の山」として信仰対象になっている山に測量隊を案内する案内人と地元の人々との葛藤、若い測量隊員と人夫との軋轢、同じく初登頂を目指す日本山岳会とのライバル関係、などなど。そうしたさまざまなものを背負い込んで、実直に使命を果たそうとする人々が、実に清々しく描かれています。悪人はほとんど出てきません。無茶な命令を下す陸軍上層部の面々も悪く見えない。そりゃそうだ、一番上の少将が笹野高史だものw それは冗談として、キャストがあれだけ「男前」揃いでは、清々しく作るなという方が無理。柴崎に浅野忠信、案内人・宇治長次郎に香川照之、山岳会リーダーの小島に仲村トオル、柴崎にアドバイスを与える元測量手に役所広司
浅野忠信が明治の人なのに「デケェ」と言っていたのにはちょっと違和感を覚えましたが。あの時代にそんな言い回ししないよねきっと。あと、この時代のスーツって格好いいな、と。三つ揃いが欲しくなってしまいましたw

人がどう評価しようとも、何をしたかではなく、何のためにそれをしたかが大事です。悔いなくやり遂げることが大切だと思います。

実直、一心不乱、継続、不撓不屈、信頼、勇気……。この物語を表す言葉を挙げてみたけれど、どれもこれも欠けてるなぁ、オレには。