『子供の情景』

映画『子供の情景(公式サイト)
【評価】★★★★★

久しぶりです、こんなに後味悪い映画は。
出来が悪かったという意味ではありません。子供の演技は一部でキツいレベルでしたが、「戦争ごっこ」の男の子たちは不気味でもあり、良かったと思います。
後味悪い理由はラストですね。救いのない終わり方というのは別に免疫がないわけではありませんが、最後「その言葉で終わらせるか」という…。公式サイトの解説では「未来への希望」云々と書かれていますが、少なくとも私には感じられませんでした。


【注意】ここから先は内容に触れています。


物語の各場面に込められる寓意はさまざまです。バクタイがノートを買いに行く場面では、金銭というものの絶対性が描かれているように思えます。卵四個は金額にするとノート・鉛筆と等価であるはずなのに、それをノート・鉛筆と交換するためにはまず卵を売らなければならない。売店の兄ちゃんはやけに親切にしてくれますが、「かわいそうだから卵と交換してやろう」とは決して言わない。結局卵を半分割ってしまったためノートしか手に入らないわけですが、ここでも大人は一切同情しない。
「戦争ごっこ」から逃れて、残してきた他の捕虜役の女の子の救出を警官に頼む場面。自分は交通整理担当だから山の方を管轄する同僚に言っておくよ、という応対をする警官。すぐ後でサイレンの音が遠くで鳴っていますが、結局「戦争ごっこ」をしている男の子たちは最後にまた出てくるわけで、警察は何もしていないことになる。大人の無責任さ、組織というものの不誠実さを描く意図があると思われます。男の子たちがタリバンを名乗っているところから、警察=アメリカってことでもあるんでしょう。
やっと辿り着いた学校で、バクタイが鉛筆代わりに持っていた口紅でクラス中の女の子たちが化粧を始める場面では、女教師が騒ぎに目も暮れずひとりの生徒に数字の「5」を書く練習を延々と続けさせていますが、これまた大人の無関心ぶりを描くとともに、「結局女の子の頭の中は勉強よりおしゃれ」という寓意も有ったんじゃないでしょうか。ゴメンなさい怒らないで下さいw

「戦乱・貧困にも負けず逞しく生きる子供の姿」みたいな幸せなものを求める人は見ない方がイイと思います。「世界はどうしようもないけれどそれでも生きていかないとしょうがない」という諦観をお持ちの方、これから持ちたい方限定で。