『イントゥ・ザ・ワイルド』

イントゥ・ザ・ワイルド(公式サイト)
【評価】★★★★★

大学を卒業後、家族の前から突然姿を消し、放浪の旅の果てにアラスカで命を落とした青年の物語。

ボクも旅は好きで、しょっちゅうというわけではありませんが、年に一度は長めの旅に出るという生活をこれからも続けたいなぁ、と思っています。が、基本的にボクのそれは「帰ってくる」ということを強く意識した旅で、この映画で描かれるクリスのように「生き方を求めてさすらう」というスタイルのものではありません。それは、家庭環境に恵まれ、「家」というものをポジティブに捉えるように育ったからかな、と、この映画を見て感じました。
クリスは、大学を優秀な成績で卒業、前途を期待される若者でした、世間的には。しかし、幸福に見えた家庭は深刻な問題を抱えており、このことが彼を「自分探しの旅」に駆り立てた動機の一つとなっています。そして、道中さまざまな人と出会い、最後に「幸福を人と分かち合うこと」の大切さに気づくものの…

家族の大切さとか、人との絆の大事さに気づくプロセスは人それぞれ。クリスのように回り道をしてそれに気づくのが良いのか、それともそうした大切なものが当たり前のように存在する環境にい(てその上に胡座をかいてい)られるボクのような人生が良いのか…

小道具の使い方が上手いと思いました。「不思議なバス」での生活でしばしば出てくる帽子・ベルトが彼の旅においてどういう意味を持つものであるかが徐々に描かれていくところとか。ハンバーガーショップでクリスが靴下を履いていないことを店員に指摘され、あとの場面で息子を想って路上で泣き崩れる父親の足にも靴下がないのは、嫌っていても父と息子には通じるところがある、ということを表現したかったのでしょうか。映像も良かったです。ストーリー共々、アメリカでなければできない映画だな、と思いました。