『歓喜の歌』

歓喜の歌』(公式サイト)
【評価】★★★★★
ある市民会館で起こった、ママさんコーラスのダブルブッキング。事態の収拾に当たった「お気楽中年公務員」の飯塚主任。どうせママさんコーラス、と気楽に考えていた彼を待ち受けていたのはとんでもないドタバタ劇だった。

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笑いあり、涙あり、充実の二時間でした。
上手だなと思ったのは、最後の「歓喜の歌」のシーンです。己の適当さからダブルブッキングを招き、事態収拾に奔走した飯塚主任は、結局ある事情から最後の「歓喜の歌」を全く聴くことができなかったんですね。ここで彼をまた揉め事に放り込むことで「歓喜の歌」のシーンが泣き一辺倒ではなく笑いの要素がたくさん詰まった構成にした。ここんところがボクは好きです。もし彼があの場に居合わせてしまうと、いかにも陳腐な泣かせ方でちょっと冷めてしまうところでしたが。正直ボクは泣くのと笑うのと両方に忙しくて大変でしたw
「どうせ」と主任がナメてかかっていたママさんたちには、それぞれの生活があって、コーラスに対する思い入れがあって、そのことを主任が思い知らされるのがガールズのおかみさんの「ギョーザ」のエピソード。それに続いてレディースの元メンバー(何かアレだなこの書き方w)の「病室の歌」のエピソードが出てきます。これまた陳腐な作り方だとガールズとレディースが互いにその話を知って、それで仲良くなっちゃって…みたいな話になりそうですが、そうはなっていない。それはこの物語がママさんたちの対立ではなく主任に焦点を当てた作りになっているからであって、そこの所も上手く練られているな、と感じました。
ギャグも鉄板モノばかり。安心して笑えます。泣かせ方も王道。ハンカチは忘れずに。最後の場面以外でも、「泣かせるかと思いきや笑わせにかかる」という所がいくつもあるので忙しいですよぉ。これだけ盛りだくさんの内容が30・31日の二日間だけで進行しているとか、改造後の市民ホールにはオーケストラピットらしきものは見当たらないのに「歓喜の歌」がオーケストラ付きで流れていて、ママさんたちが歌い終わった後も指揮者が誰かを見ながら指揮棒振っているとか、細かいところが気になった自分の底意地の悪さが情けないw これから観に行かれる方は、底抜けに笑い、泣いてください。