桂米朝『桂米朝 私の履歴書』

桂米朝 私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

桂米朝 私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

「心底好きな落語を語って生きてこられた幸せ」−1947年に四代目桂米団治に入門以来、60年にわたって上方の笑いを追い求めてきた不世出の落語家、桂米朝。落語界ただ一人の現役「人間国宝」にして文化功労者の自伝。(裏表紙より)

中学生ぐらいの頃に、なぜか落語に、というより米朝さんにハマってしまった時代がありました。ドタバタ、ギャーギャー言う若手のお笑いさんと違った、落ち着きのある語り口に、子どもながらに惹かれていたんだと思います。
本書はそんな米朝さんの自伝。ずっと読みたかったのですがなかなか手に取る機会がなく、この度文庫化されたということでようやく購入。楽しく読めました。
戦後、「上方落語は滅びた」と言われた時期に、同世代の若手とともにその復興に尽力したのが米朝さん。落語などの語り物のことを「噺(はなし)」と書きますが、まさに米朝さんの口によって新たに蘇ったネタは数知れず。しかし、苦労話を大袈裟に語ったりせず、仲間との切磋琢磨、弟子の話などを綴る口調(噺家さんですからね、「筆致」より合うでしょ)はあくまで軽やかです。
こういう自伝にも笑いを入れないと気が済まないのか、随所におかしなエピソードがちりばめられていて、巻末の年譜でも笑ってしまいました。寝相が悪くて肋骨にヒビ、って…(笑
大分歳もいってしまった米朝さん。これからも元気でいて欲しいですが、死んでもきっと立派な桐の棺桶に入れまっせ(笑)*1

*1:「立派な桐の棺桶に…」:人間国宝に認定された際に、弟子たちに「米朝は桐の箱に入れてきました」とか「ガラスケースに入れて、乾燥せんように水の入ったコップも一緒に入れとかんと」とかえげつないネタにされたことに因む。ちなみに本人も「これが壺やら絵画なら息子たちも高うに売ることができるんですが…」と言ったという。