新田次郎『アイガー北壁・気象遭難』

アイガー北壁・気象遭難 (新潮文庫)

アイガー北壁・気象遭難 (新潮文庫)

たまに思いついたように手に取る山岳モノ。
フィクション・ノンフィクション問わず、山岳モノの面白さとは、極限状態に置かれた人間が見せる「本当の自分」の姿にあると思います。本作でも、富士山頂観測所のベテラン職員(このエピソードは実際の事故をもとに書かれているようです)、たった一人で遭難したものの冷静な対応を見せた女性登山家から、「涸沢」を「軽井沢」と間違えてきたバカップルまでさまざまな人物が登場しますが、いずれも興味深く読めました。最後の、無理してスキーで山を下ろうとして遭難しちゃった男の話は…笑ってイイんだよね?


本書はフィクションなわけですが、一方でリアルな登山家の凄さは、気候、雪崩、落石、仲間の負傷などまさに「不測」の事態に対し、これらを常に想定して対応できる心の準備を、山という過酷な環境において常に維持し続けることができるという点にあると思います。これは日常においても大事なことで、いつも良い意味での緊張感を持って生きていきたいものです。