ビール業界に外資の矢、サッポロへTOB提案(asahi.com)

 ついに動き出した――。米系投資ファンドスティール・パートナーズ・ジャパンが、すでに筆頭株主となっているサッポロホールディングス(HD)に仕掛けた買収提案を、関係者は一様にこう受け止める。スティールは06年、明星食品に敵対的な株式公開買い付け(TOB)を仕掛け、ホワイトナイト白馬の騎士)の日清食品保有株を売り抜けて巨利を得た。その再現となるのか。同HDが買収防衛策で対抗するのか。業界再編の可能性もはらみ、攻防が幕を開けた。

 サッポロHDに対する提案は表向き、経営陣の賛同を求める友好的なスタイルだが、実態は敵対的と言える。3月の株主総会で防衛策の廃止を議題にするよう求める一方、いきなり買収を提案してきたからだ。

 スティールの真の狙いは、保有株の高値売り抜けにあるとの見方が市場では多い。食品業界では昨年以降、即席めんや冷凍食品など大手の経営統合が相次ぎ、企業の合併・買収(M&A)機運が高まる。証券会社もM&Aの仲介や支援ビジネスに力を入れており、売却先探しには事欠かない。

 スティールは経営陣に改革を提案するアクティビスト(行動家)ファンドとして知られるが、日本では割安な株式に3年程度投資したうえ、売却して利益を得るスタイルを得意とする。サッポロHDへの投資は04年からで、「そろそろ果実の収穫時期」(ファンド関係者)と見る向きも多い。

 提案でのTOB価格は「825円程度」。平均3割程度が上乗せされる欧米のTOBと比べ上乗せ幅が低い。

 スティールは昨年も明星に低めの価格で敵対的TOBを仕掛け、日清の対抗TOBにつなげた経緯がある。市場関係者は、「今回も同業他社が登場して、売り抜けることを期待しているのではないか」とみる。

 サッポロ側は買収防衛策での対応が想定される。まず社外取締役有識者で構成する委員会が提案内容を審査。その助言を受け取締役会としての対応を決める。提案がルールを順守していない、またはサッポロの企業価値を著しく損なうと判断した場合、他の株主への新株予約権の割り当てで対抗する。

 この場合、スティールが法廷闘争に持ち込む可能性が高く、「裁判所の判断がどうなるかわからない」(企業買収に詳しい弁護士)という。

 より、抜本的なスティール排除に向け、サッポロがスティールの狙い通り、白馬の騎士探しに動く可能性もある。昨年、スティールが明星にTOBを仕掛けた時、サッポロ首脳は「いろんな事態を想定して検討は進めている」と述べていた。

 白馬の騎士候補として名前が挙がるのが同業大手のアサヒビールキリンビールサントリー。特にアサヒは、1949年に分割されるまで同じ「大日本麦酒」で、うわさは絶えない。ただ、各社首脳はこれまで、白馬の騎士となることに否定的だ。「サッポロが同業他社に助けを求めるかどうか疑問」(金融関係者)として、サッポロ経営陣による自社買収(MBO)の可能性を指摘する見方もある。

 サッポロの株価はスティールの動きを巡る思惑もあり、この10年で最高値水準となっている。サッポロ自体の業績が伸び悩むなか、「何をやるにも株価が高すぎる」という声も同業他社の関係者からは聞かれる。

スポンサー様に訪れた危機。JALといいサッポロビールといい、苦しい状況で支援してくれる企業には頭が下がります。頑張れ。