食の社会見学

「社会見学」と呼べるような穏やかな内容ではない。
映画『フードインク』『ありあまるごちそう』(公式サイト)
【評価】★★★★★
前者はアメリカの食品の安全、後者はヨーロッパを中心にグローバル化された食品産業と貧困の問題を描いたドキュメンタリー。
両者に共通しているのは、大企業による大量生産の構造的欠陥、企業の利益至上主義を批判するという論調。他の工業製品であればこうした視点は至極当たり前に思えるのですが、食品に関してはすっかり欠落していた私。「食べ物だけは特別」という感覚があったようです。しかし、これらの映画で描かれる光景はもはや「栽培」「飼育」とは呼びがたい。2年ほどまえに『いのちの食べ方』を見たときにも感じていたことですが、あのとき以上に衝撃です。
こうした大量生産を促す要因として、「安けりゃなんでもイイ」という消費者がいることは間違いないでしょう。何事にも適正価格というものがある。
映画としての終わり方は対照的。前者が有機農業に携わる人々の前向きなメッセージで締めくくるのに対して、後者は燃料として燃やされるトウモロコシ(食べ物として余ったのではない、最初から燃料として作られるトウモロコシ!)の映像で終わる。その直前のインタビュー、ネスレの会長は神にでもなったつもりか。