並木頼寿『日本人のアジア認識』(『世界史リブレット』66)

日本人のアジア認識 (世界史リブレット)

日本人のアジア認識 (世界史リブレット)

幕末からアジア・太平洋戦争終結までにおける日本人のアジア認識の変遷を簡便に紹介した一冊。現在の底が浅い反中・嫌中論は本書で述べられている「近代的価値観」の残滓。こういうの、ちゃんと読め。

靖国参拝」の問題は、日本人のなかに、日本人独自の方法で歴史を追憶したいという考え方が根強く存在していることを示している。しかし、近代日本の歴史は、とりわけ二十世紀の歴史は、日本とその近隣諸地域との関係なしには存在しえないものであった。しかもその関係は、現在にいたっても、近隣諸地域の側からは、日本の禍害と自らの被害というかたちで記憶される関係であり、このことを閑却して歴史を追憶することはありえない事柄なのである。(p.75)