『いのちの食べかた』

いのちの食べかた(公式サイト)
【評価】★★★★★
普段我々が口にしている食べ物が、どのようにして「作られて」いるのかを、映像のみで記録したドキュメンタリー。
「作られて」と括弧付きで書いたのは、映像のほとんど全てが、飼育とか栽培という言葉から私がイメージするものとはおよそ懸け離れたものだったからです。トマトが収穫され、牛乳が搾乳され、ひよこがベルトコンベアーで運ばれ、豚や鮭が解体されるその様子は、生き物を扱う作業とは思えません。さながら「製造」。牛の帝王切開はかなりショックでした。また、ところどころに挿入されている、食品産業に関わる人々が食事を摂る場面も印象的です。
地球上のいかなる消費者も、他の命を奪うことなしに生きてはいけませんし、捕食する相手をかわいそうなどと思う生物も人間以外にもいないでしょう。が、ここまで命をコントロールしなければ存続できない種になってしまったことを、我々人間自身がどう考えるか…。人間という生き物の宿業みたいなものを感じさせる作品です。
本筋とは関係ないのですが、映画で流れる食物の大量生産の様子を見るにつけ、こんな狭い国で農業やっても少なくともコストの面で太刀打ちできるはずがない、と思いました。「だから日本に農業は要らない」とは言いませんが、食料の多くを海外に頼っているという現実をどうするか。安価な商品を求めて海外に依存し続け(て、何か問題が起こったら輸入相手をヒステリックに叩き続け)るのか、コスト高をのんで国内産品を増やす方向に行くのか。