『北極のナヌー』

『北極のナヌー』(公式サイト)
【評価】★★★★☆
地球温暖化の影響で環境が激変する北極において、一頭の白熊の成長を追ったドキュメンタリー。
といっても、白熊だけでなく同じ時期に生まれたセイウチも追っていて、ストーリーは両者を交互に扱いつつ、最後に白熊とセイウチの歩みが交錯して…という流れになっています。
皇帝ペンギン』のスタッフの手になる作品、ということで同じようなタッチを期待していたのですが、よりコミカルな部分が多かったですね。食後のセイウチの「アレ」などw
見終わった直後の感想は、自然の厳しさとか生きることの難しさといったものがイマイチ明確に伝わってこなかったな、というものでした。最初は上記のコミカルさのせいかと思ったのですが、どうもそうではないかな、という結論に達しました。
皇帝ペンギン』は、「過酷な寒さ」の中を生きる姿を描いた作品だったため、寒さを辛いと感じる人間にも伝わりやすかったんだと思うんです。とりわけ私は札幌に住んでいますからよく分かるつもりです。
一方この作品では、温暖化の影響で北極の氷が減少し、その中で白熊をはじめとした生物が生きていく様が描かれています。詳しくは映画で語られているのですが、白熊というのは氷を利用して獲物に気づかれないように接近して狩りを行うんだそうで、だから温暖化によって生態系が脅かされるということになるわけです。つまり、この映画で描かれているのは「過酷な暖かさ」の中を生きる姿を描いた作品、ということになります。
暖かさが危機をもたらす、このことは言葉では説明できても実感として解りづらい。人間にとっては暖かさよりも寒さの方が堪えます。これが「イマイチ伝わってこなかった」原因だと思います。そしてこれが、人間が温暖化を自らに関わる問題として真剣に考え切れていない原因でもあるのかな、とも感じました。


ナレーションはやっぱり日本語でない方が良かった。ゴローちゃんが悪いというのではなく、分かる言語で話されるとどうしても頭に入り込んできてしまう。ドキュメンタリーの場合、映像そのものの迫力を味わいたいというのが私の見方(だから外国語版の場合字幕を読み飛ばすこともしばしば)なので、ちょっとジャマに感じました。これは好みの問題ですね。エンディングテーマは手嶌葵、『ゲド戦記』の彼女です。