天童荒太『包帯クラブ』
包帯クラブ The Bandage Club (ちくまプリマー新書)
- 作者: 天童荒太
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/02/07
- メディア: 新書
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先日見た映画の原作。
原作の方が、終わり方がちょっと慌ただしい感じがします。ディノのトラウマの話と、テンポを探し出す過程が同時進行しているので、互いを薄目あっているような感じが…
あと、映画のレビューで「ギモのトラウマの内容とその後のシーンの関係」について「引いてしまった」と書きました。この点についてちょっと懺悔をしておきたいと思います。
原作では、ゲイかも知れないとカミングアウトするのが先で、その後に男性教諭に悪戯されたというトラウマがギモ自身の口から語られて、その現場である中学校の理科室に包帯を巻きに行く、という展開になっています。そこの部分を引用。
だが、タンシオとのメールで、傷を受けた場所に包帯を巻いてもらうと、気持ちが軽くなる可能性があることを知り、心が動いた。自分が男子を好きなのも、あの時のことが原因かどうかで苦しんでいたから、はっきりさせるためにも、包帯を巻いてほしい、と打ち明けた。
このような説明があれば引かなかったのに…と一瞬思ったその次には、こう書いてありました。
話を聞いて、わたし(ワラ:引用者注)は、その教師は犯罪者だけど、同性を好きになるのはおかしいことじゃないと答えた。
引いてしまったのは、映画の演出に対する違和感だけじゃなくて、このことに対する不理解が原因かも知れません。もし同性愛者の方が見ていたらごめんなさい。
人が受けた深い傷に、わたしたちができることは、ほとんどないように思う。でも、相手の沈む心を想いながら包帯を巻くことで、〈それは傷だと思うよ〉と名前をつけ、〈その傷は痛いでしょ〉と、いたわりを伝えることはできるかもしれない。
どれだけの慰めになるかはわからない。
でも、相手が抱えている風景が、血まみれの廃墟のようなものだとすれば、そこに純白の包帯を置くことで、風景が変わって見えることもあるんじゃないだろうか……。
「そうだね……何もしないより、まず、やってみようか」と、わたしは言った。