上橋菜穂子『精霊の守り人』

精霊の守り人 (新潮文庫)

精霊の守り人 (新潮文庫)

何だアニメ化もされているんだな。何気なく手に取った一冊。なかなか面白かったです。
この手の作品って西洋の世界観・宗教観をもとに書かれているのが多く、根本のところで分からない、ということがままあるのですが、どうやらこれは東アジア文化圏をモデルとした舞台設定がされているようです。すんなり読めたのもその辺に理由があるかも知れません。
筆者は文化人類学者のようで、人間集団(「民族」という語は避けておく、上記の本を読んだ後だけに特にね)ごとの自然崇拝の有り様の相異なんかが隠れたテーマになっていたりします。それに五行説に近いものが出てきたり、「勝者による歴史叙述のされ方」まで出て来ちゃったり。最初は児童文学として出版された作品なのであまり深い話にはなっていませんが、しっかり読めば言いたいことが分かるようになっています。
もっとも歴史叙述については、「敗者の側の記憶」が口語伝承を読み解くことで再生されていく過程は「いかにも人類学者だなぁ」と思って読んでいたのですが、「勝者の側が残した文献」に真実に到達する手掛かりがまんま残っている、というところは、ボクなんかには「そりゃないだろう」と思えてしまうのですが、まぁ仕方ないか。
シリーズものらしく、今後も読み続けていくつもりです。