杉山正明『モンゴル帝国と長いその後』

キタイを飲み込んだ後のモンゴルの話ですよ>挨拶

モンゴル帝国と長いその後 (興亡の世界史)

モンゴル帝国と長いその後 (興亡の世界史)

人類史上かつてなかった規模・構造を持ったモンゴル帝国と、それが残した「遺産」について、主に中央ユーラシアから中東、ヨーロッパを中心に述べた一冊。
時代・地域・テーマをある程度区切ったこれまでの著作に対し、本作はモンゴル帝国に対する総論といった位置付けになるのでしょうか。相変わらず特定の地域社会・文明を殊更に貶すような書きっぷりが気になりますが(今回は主にロシアが「攻撃」対象)。
モンゴル帝国像を西洋・中華の側からの見方を排した形で描くことに加えて、もう一つの本作の狙いは現代における「帝国」=アメリカの有り様と現代社会の行く末に警鐘を鳴らすことにあります。その点、「帝国」をキーワードに世界史を描き現代社会を読み解くヒントを提示するという本シリーズの方針を今のところ最も良く体現していると言えるでしょう。っていうか彼は編集委員なんだから当たり前か。むしろ「彼ら編集委員の意図を汲み取るのに他の執筆者たちが苦労している」と言うべきか。