上橋菜穂子『流れ行く者―守り人短編集』

流れ行く者―守り人短編集 (偕成社ワンダーランド 36)

流れ行く者―守り人短編集 (偕成社ワンダーランド 36)

守り人シリーズ」の番外編。バルサ13歳、ジグロがまだ生きていた頃のエピソードです。
「こういう感情の動きの描写、子供に伝わるのかな」というのが読後の最初の印象です。特にバルサが初めて人を殺めるところ。
このシリーズが児童文学っぽくないのは結構手の込んだ人物描写がなされているからかな、と。それでも本編では子供にも伝わるようにはっきりと文章で表現しているところが多い。本作はその点、だいぶ難しく書かれているように感じました。それは、本編ではチャグムたちにさまざまなことを伝える「大人」として出てくるバルサやタンダが、本作では「子供」であり、そのぶん彼らの科白を用いた説明が少ないせいかも知れません。