羽田正『東インド会社とアジアの海』
- 作者: 羽田正
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/12/18
- メディア: 単行本
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東インド会社の行動は、例えて言えば、ほとんど元手をかけずに人の家から持ち出したお金を使って、本来足を踏み入れることのできないはずの店の一流品を買い、それを自分の家に持ち帰って利用したり、売却して利益を得たりしていたということである。このような行動を二〇〇年も続ければ、北西ヨーロッパが全体として豊かになり、世界をリードする経済力を身につけるのは当然だろう。アメリカの銀とアジアの物産が「近代ヨーロッパ」の経済的基盤を生み出したのである。(p.354-355)
これが経済活動の範疇にとどまっていた17・18世紀は、ヨーロッパ・アジア双方にとってまだ平和な時代だった。本書はこの時代の実相を描くことを目的としたものですが、一方で領土的野心と国民国家の理論がアジアに持ち込まれた19世紀には様相が一変するわけです。そこのところへの言及が少ないので少々「欧米礼賛」の傾向ありととられかねないな、と要らぬお節介の一言を。