中国産冷凍餃子食中毒問題関連記事

どの段階で混入したか?

 毒物学の専門家には、ギョーザの打ち粉に粉末の殺虫剤が紛れ込んだなど、毒物が直接混入したとみる人が少なくない。残留農薬が原因なら、2事件でパッケージからも毒物が検出された事実に説明が付きにくい。

 最初にパッケージが汚染されたとする説もある。中京学院大中国ビジネス学科の久野輝夫助教によると、中国では10月1日の「国慶節」のころ1週間ほど工場が止まる。その前に虫の卵がつかないよう倉庫を燻蒸(くんじょう)する習慣があるという。

 問題の製品は昨年10月1日と20日に製造されたとみられる。倉庫内に保管されていた袋も燻蒸され、薬剤が残った状態で休み明けにギョーザが詰められた――。

 「包装に農薬が付いていれば、ギョーザ一つひとつを調べても検出されない。全国各地で被害が出たのは、その時の袋が各地に出荷されたからではないか」と話す。

 農林水産省によると、ギョーザなど豚肉を使った食品は、同省による加熱工程の検査に合格した「指定工場」でないと日本に輸出できない。家畜伝染病の口蹄疫(こうていえき)を防ぐためで、現在、中国には、問題の天洋食品など79の指定工場がある。

 加熱の基準は「蒸気で食品の中心温度を1分以上70度にすること」。現場の工場は、制度が導入された01年5月に指定工場になり、05年6月の検査でも、温度、時間とも合格だったという。同工場では、ギョーザのあんを皮に包んだ後で加熱工程に回していた。

 食品分野に詳しいある貿易会社OB(63)は「きちんと熱処理をしている工場で人が重体になるほどのメタミドホスが残留したとは、何者かが故意に入れたとしか考えられない」と指摘する。

     ◇

 厚生労働省警察庁は、中国での製造や包装の過程で農薬が混入したとの見方を強めている。

 厚労省幹部は残留農薬が原因であれば「一個のキャベツに何リットルもの農薬をぶっかけたようなレベルの濃度だ」と話した。

 兵庫県と千葉県で食中毒を引き起こした冷凍ギョーザは、その後の厚労省の調査で、ともに天津から船積みされたが、別の船便で川崎港と大阪港に輸送され、積み込み日も別だったとわかった。これらから日本国内で混入した可能性は低いとの推測が出ている。

 警察当局は、ギョーザやパッケージを鑑定し、輸入元や商社に事情聴取している。ギョーザの包装には人為的な穴などの不審点は見あたらず、中国での製造・包装の過程で混入された疑いがあるとみている。

 千葉県警は、千葉市稲毛区の母子が食べたギョーザなどを鑑定中だ。このケースでは調理前のギョーザが残っていたため、鑑定で農薬成分の付着部分を特定できる可能性があるとみられる。

 何者かが故意に毒物を混入した場合なら、殺人未遂の国外犯規定を適用する可能性もあるが、過って混入する業務上過失傷害には適用されない。

これを読む限り、野菜の生産段階ではなく加工の過程で混入した可能性が高そうです。

輸入後に見つけられなかったか?

横浜検疫所が検査現場公開――「殺虫剤は想定せず」(NIKKEI NET)

それはそうでしょう。そんなモンが混入していることをいちいち想定していたら、いくつ検査をやっても足りない。

が、拡大を防ぐ手だてについては、拙い点がいくつかあったようです。

発覚後の対応

 昨年12月28日に中国製の冷凍ギョーザを食べて中毒になった千葉市稲毛区に住む主婦(36)を診察した千葉市立青葉病院(同市中央区)が「食中毒の疑いがある」と診断しながら、食品衛生法に定められた保健所への届け出を怠っていたことが31日わかった。

 千葉市も1月4日に、主婦がギョーザを買った「ちばコープ」(千葉市)からの情報で、体調を崩した女性がいることを知ったが、病院から届け出がないことなどから、詳しい検査をしなかったという。

 同病院事務局によると、主婦が別の病院から転送されてきたのは、ギョーザを食べた約4時間後の12月28日午後10時ごろ。吐き気や下痢などの症状を訴え、急性胃腸炎の患者として処置され、翌29日午前に退院した。

 同病院は1月4日に「急性胃腸炎または食中毒の疑い」との診断結果を出したが、保健所に届け出ることなく、主婦に診断結果を知らせただけだった。主婦が食べたものから、ギョーザが原因だった疑いが強いことは把握していたという。

 食品衛生法では、「食中毒の患者や疑いのある者を診断した医師は保健所長に届け出なければならない」と定めている。同病院は「届け出義務は知っていた」と法違反を認めたうえで、「(当時は)感染性胃腸炎が多発している時期で、冷凍ギョーザを原因とする中毒と断定できなかったため、届け出は必要ないと判断した。今後、マニュアルなどを見直していかなければならない」と話している。

「ギョーザで食中毒の疑い」届け出ず…千葉市立青葉病院(YOMIURI ONLINE)

 ジェイティフーズが輸入した冷凍ギョーザをめぐる中毒問題で、兵庫県から中毒発生の連絡を受けた東京都が、同社のある品川区に調査を依頼した際、ファクス送信ミスがあり、肝心の有機リン系中毒症状の有無が区側に伝わっていなかったことが分かった。会見した都は「その後の対応に変化があったとは思わないが、ミスが起きたことは申し訳ない」としている。

 都によると、1月7日午前9時ごろ、兵庫県から「5日にギョーザを食べた3人に血中コリンエステラーゼ活性低下など有機リン系中毒症状が出た」との連絡があり、ジェイティフーズへの調査を求められた。都は同日午前、品川区に対し、同社への調査を求めるファクスを6枚送信。しかし、本来伝えるべき有機リン系中毒症状を記した紙を送っていなかった。

 ジェイティフーズ側が30日、「当初、有機リン症状があったとは聞いていなかった」と説明したとの報道があり、外部の指摘を受けて調べた結果、送信ミスが判明。品川区に聞いたところ、中毒症状を記した紙ではなく、ギョーザの写真が送られていたという。

 品川区は7日、同社から電話で聞き取りをしたが、「同様の健康被害の報告は入っていない」との情報を得るにとどまり、詳しい調査に乗り出さなかった。こうした経緯について、都は「送信後に区に電話連絡もした。ファクスの別紙には『胃洗浄』などの文字もあり、ただの食中毒ではないとわかる内容だった」と釈明している。

FAX送信ミス、有機リン系症状伝わらず 東京都(asahi.com)

根本的に製造元が悪いのは言うまでもありません。一方で、日本の食生活は中国産の食品に依存しないと成り立たない状態になっています。安価な農作物を求めるあまり、生産者・製造者にコストダウンを強いて、それが杜撰な管理・検査につながっている面もある。自給率の点からも、これからも中国産に限らず外国産の食品に頼らざるを得ないわけですから、是非ともしっかりした原因究明と再発防止の対策を。