今日の言霊・2008-01-20

時間とは、物差しの上を一目ずつ進んでいくようなこととはもちろん違い、そこではよどみ、ここではあふれ、流れだし、見えないほど遠くへ消えていったかとおもえば、背中からふいに押しよせて勢いよく、といった体の、不定形の、いきいきとした、巨大なひとつながりのたぶん何かで、全体を見わたしたり、その端に触ったりましてや飛び出たり、といったことは、人間は人間をやっている限り、ふつうはできないようになっている。
いしいしんじ「遠い足の話 東京都渋谷、六本木、北千住」(『yom yom』vol.5)