重松清『流星ワゴン』

流星ワゴン (講談社文庫)

流星ワゴン (講談社文庫)

父と子、家族、人生のやり直しといったものをテーマにした小説。
中学受験に失敗した息子の引きこもりや妻との離婚問題に加えてリストラに遭い、人生を投げ出したいと思った主人公が、交通事故で死んで成仏できずにいる親子の乗る車に乗せられ、人生の岐路となった過去に旅する、とまあ映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のような設定。しかしストーリーはより複雑。メインテーマは「父と子」で、主人公とその息子、主人公の父親と主人公、ワゴンで事故死した父子、これらの関係が実に手際よく織り込まれています。「人生のやり直し」というテーマに対しては安易な解答は提示されないながらも、少しの希望を滲ませつつ物語は終わっています。たとえ「物語のその後」がハッピーなものにならなくてもそれはそれで仕方ない−筆者はそう言っているように思えますし、現実世界にだってハッピーエンドはそうそう転がっているものでもないよ、と言っているようにも読めます。


私自分の親子関係になぞらえてみると、主人公と父親のような行き違いはあまりなかった(と信じていますがw)ので、そこまで身につまされる思いはしなかったですね。ただ、遠からず訪れるであろう父の死に際して、どんなことを考えるか、何を思い出すかはまだ分かりませんが……。はい?健在ですよ、もうバリバリ(笑
むしろ将来自分が父親になったときに上手くやっていけるか、非情に不安になってきました。とりわけ文庫版の「解説」を読んだ後では。
誰かにアドバイスを与えるときに独りよがりな意見を吐いてしまったり、相手との関係性を自分だけの理想に当てはめてしまったりという長年の欠点を露呈する場面が、最近の現実世界でも続いているのでね。父親業を黙々とこなしている人、父親になりたての人、もうすぐ父親になる人、私の身近にもさまざまな父親がいますが、彼らすごいな、と思いますね。父親になるって怖ろしい……。ん?誰だ嫁探す方が先だろうと言ったヤツはw


映画化の話があるとか。最初はアリかな、と思ったんですが、読み進めるうちに2時間で収まらないんじゃないか、と思い始めました。三つの父子関係のどれかが軽い描かれ方になってしまいそう。やるにしても、ワゴンが走っているところとか過去の世界へ入り込むところとかでヘンな特殊効果を使うのだけはカンベン願います。