中野美代子『乾隆帝―その政治の図像学』

その政治の図像学 乾隆帝 (文春新書)

その政治の図像学 乾隆帝 (文春新書)

清朝第六代乾隆帝が絵画・建築・詩文などに込めた意図を、図像学の見地から解き明かした一冊。
全体の構成が、一つの結論に向かって収束していくというものになっていないので、少々読みづらいかも知れません。
細かい話ですが表記方法にイチャモン。カタカナで「契丹」に「キッタン」とルビを振るのはマズイ。「女真」に「ジュルチン」と振っているのが女真語(満州語)の発音に依ってのことならば、同じカタカナならばここは「キタイ」でしょうやっぱ。そうでなければひらがなで「きったん」と書き、現代日本人の読み方ですよ、と明示すべき。キタイが自らを「キッタン」などと珍妙な発音で呼ぶはずがないよねぇ。
同じ理由で「福臨(ふくりん)」ってのもヘンですね。順治帝の名は満州語でフリン。これにあとから「福臨」という漢字を当てたのだから、やっぱり「フリン」と書かないとマズイ。
美術や建築などは完全に守備範囲外なので、細かい謎解きや解釈に口を差し挟む資格はなし。それらから導き出されるものについては知っていることもあれば「ふーん」ということもあり。こういうものをメインに据えて話を進めるというやり方は、やっぱり馴染めないんだよなぁ。