靴下は洗っておこう

皆さん、「どっちもどっち」という日本語のとても良い用例が見つかりました。

「21世紀の新中国」(朝日新聞2007年2月24日・特派員メモ)

 出張で訪れた北京は、2月だというのに拍子抜けするほどの暖かさだった。
 昼過ぎ、取材に行こうとタクシーに乗ると車内に英会話のテープが流れている。「五輪に向けて運転手さんも勉強か」と感心した。窓ガラス越しに差し込む陽光で車の中は汗ばむほど。足の裏がかゆくなったので、何げなく靴を脱ぎ、靴下の上から土踏まずのあたりをポリポリとかいた。
 その時。運転手が振り向いて「没有文明(マナーがなってない)!」と、ののしるではないか。その言い方にカチンときた。「タクシーで靴を脱いではいけなくなったなんて初耳だ」と言い返すと、運転手は「知らないのか。これが21世紀の新中国だ!」
 自分の行儀の悪さを棚に上げて言うのも何だが、北京のタクシーではたばこは吸い放題、運転手が窓から道路にたんを吐くのもよくある光景ではなかったか。五輪を控えマナー向上が急務とはいえ急に神経質になられてもこちらが面食らうというものだ。
 気になって別のタクシーの運転手に意見を聞いた。「お客さんの足が臭くても、そっと窓を開けて気づいていただくのがサービス業です」。やけに丁寧だ。そうですよね、とうなずきながら「うかうかしていると時代に取り残される」と肝に銘じた。

「サービス」を口にする運転手(後者)の言葉に「よくぞここまで…」としばし落涙…って、そっちの方がイヤミだろうが!