生井英考『空の帝国 アメリカの20世紀』

空の帝国 アメリカの20世紀 (興亡の世界史)

空の帝国 アメリカの20世紀 (興亡の世界史)

飛行機の登場から現代まで、戦争における航空の役割、航空技術の発展が世界に及ぼした影響を軸にアメリカにとっての20世紀を描いた一冊。


若干中途半端かな、という印象を受けました。魅力的なタイトルなのに。
分量の都合もあるんでしょうが、もう少し網羅的にアメリカを巡る諸問題を取り上げても良かったのではないでしょうか。例えば冷戦期の国際関係については非常に淡泊な扱いです。確かにベトナム戦争アメリカにとって大きなトラウマとなった出来事ですが、その後の「ユーフォリア」状態を9.11以降のアメリカと結び付けたいばかりに、80〜90年代すなわち冷戦構造の崩壊とそれがアメリカに与えた影響を等閑視して良いのか疑問が残ります。
通史としては薄味に過ぎる。筆者は文化論を専門にした人のようですが、「基本的に書かれたものしか信用しない(してはならない)」という私の立場からすれば、社会現象や映像などに何らかの意味を見出す文化論にはどうも危うさを感じる*1わけでして、その辺も気になったところです。


【追記】
あたりまえですが「書かれたものは信用できる」という意味ではありませんから>「書かれたものしか…」

*1:と同時に魅力あるいは誘惑も感じるわけですが。