近藤紘一『サイゴンから来た妻と娘』

サイゴンから来た妻と娘 (文春文庫 こ 8-1)

サイゴンから来た妻と娘 (文春文庫 こ 8-1)

戦火のサイゴンで日本の新聞記者が、大輪の花のような笑顔に惹かれて子連れのベトナム女性と結婚した。親に絶対服従のスパルタ教育にショックを受け可愛いペットのウサギ料理に度肝を抜かれ……毎日のように巻き起こる小事件を通して、アジア人同士のカルチャアギャップを軽妙な筆で描く。(裏表紙より)

著者の近藤紘一さんは、ベトナム戦争の最中、1971年から75年までサンケイ新聞社のサイゴン特派員として現地に駐在。その時に結婚したベトナム人の妻とともに日本に帰国。78年から83年までバンコク特派員を務め、86年に胃ガンで亡くなった方です。
本書はベトナムでの生活と75年の帰国、その後の日本での生活が描かれています。その中心となるのはベトナム人の妻。彼女の日本での奮闘ぶり、ベトナム人の国民性などが紹介されていて、とても興味深い内容でした。また、近藤さん自身も、滞在期間が長かったとはいえ、ベトナムの習慣・考え方・子育ての方法に柔軟に適応し、日々の生活を楽しんでいたのだな、というのが伝わってきます。異文化に属するもの同士の、ある意味幸せな成功例と言えるとともに、他者への寛容性とか許容範囲の広さというものを備えておかなければいけないな、と思った次第。別に国際結婚するわけじゃありませんよ、念のためw