五木寛之『風に吹かれて』

「私はやはり基地を失ったジェット機でありたいと思う。港を持たぬヨット、故郷を失った根なし草でありたいと感じる」
時代の風のなかにこそ青春があり、暮らしがあり、夢がある。風に吹かれて漂いつづける日々を、ホロ苦さを隠し味にしたユーモアとペーソスあふれる文章で綴る第一エッセイ。(裏表紙より)

子供の頃の思い出や、大学時代の体験、作家になってからの日々などを綴ったエッセイ集。朝鮮半島からの引き揚げ者であるということから日本での生活に「異邦人」としての感覚が常につきまとったと言う筆者の、日常における「漂いっぷり」が、いかにも自然体で好感が持てます。ただ、その好感は逆に言うと自分にはできないだろうな、という感覚の裏返しでもあり…
語るべき青春の思い出って…あんまりないな。