学術研究と世間の関心

今日(2006年8月22日)放送のNHKクローズアップ現代」、「海を渡る蝶“アサギマダラ”」は、非常に興味深い内容でした。

春、南西諸島で生まれた蝶が、初夏には本州に渡り秋に再び南西諸島に戻る。"アサギマダラ"と呼ばれる蝶は渡り鳥のように毎年、2千キロもの距離を移動しながら生息している。この蝶の生態を解明したのは、全国に数千人いる蝶の愛好家たち。捕らえた蝶の羽にマジックで捕獲場所と日付を書いて放し、別の地域で再捕獲した人がインターネットの掲示板にその情報を載せる事で判明した。今、愛好家のネットワークは国境を越え、蝶が台湾にも渡る事も分かっている。か細く非力な蝶が、どうやって海を渡るのか。また、これまで津軽海峡を越える事がなかった蝶が近年、北海道やサハリンで目撃されるようになったのは何故か。市民調査が明らかにしたアサギマダラの生態。そのロマンと謎に迫る。(番組公式HPより)

非常に丈夫な羽を持っていて、上にある通りマジックでマーキングしても大丈夫なんだとか。その蝶が別なところで発見されることで移動の様子が分かる、という具合になっているようです。2000キロということは当然海を越えて移動することになり、その間陸地もないのにどのようにして休息を取っているのかなど、まだまだ謎は多いようです。「海面に羽を広げて休んでいた」という漁師の目撃情報なんかもあったりするらしい。
蝶の生態自体も興味深いですが、この「一般市民が学術調査に参加できる」というスタイルに強い印象を受けました。こうした参加型の研究が行える分野・対象は極めて限られるでしょうが、こうした「一般市民の関心がその分野の研究の進展を促す」という構図は、程度の差こそあれどの分野にも当てはまることなのではないでしょうか。
社会へのフィードバック、世間一般の関心を引く、それが目的の全てになってはどうかと思いますが、そうしたものを戦略的に視野に入れてやっていく必要はあるな、と感じました*1

*1:というわけで土曜日に喋る内容を半日かけて調べていた今日もそれなりに意義のある一日だった、ということにしておこう。