06代表を振り返る

札幌は、柳下が監督となって3年目を迎えました。ポゼッションサッカーを標榜し、長期的な視野に立ってチーム作りをはじめたのが2004年。その年は結局最下位に終わりました。はっきりってこの年は見ているのが非常に辛かったです。なにが辛かったかと振り返ってみると、戦い方がバカのひとつ覚えだったんですね。例えば、札幌は伝統的に4バックのチームに弱く、それは「ウイングバック1人対相手のSB・サイドハーフ2人」という数的不利を打開することが出来ないからだったのですが、そういう相手にも、DFラインからのビルドアップの時には、ストッパーからボランチに渡し、サイドに開いたウイングハーフへ、というパターンを「いついかなる時にも」やっていたわけです。で、ウイングに渡った時点で2人に囲まれて仕方なく戻す…。これを90分間見せられるのは正直堪えました。実は降格した2002年よりも辛かったかも知れません。
それが2年目になると、同じサイドにボールを入れるにしても、受け手が動く、周りが動いてスペースを作ってやるといったことが出来るようになってきました。その時思ったのは、「去年公式戦を練習にしてでもやってきたことが少し身に付いてきているな」ということでした。実戦を繰り返すことで応用力が付いてきたんだと思います。そして3年目の今年、なかなか勝てない時期が続きましたが、それを乗り切ってチームは上昇の気配を見せています。1年目には苦境を乗り切るのに丸々1年を費やしたのが、今年は何とか10試合で抜け出すことが出来ました。ベースを作ることに終始した1年目が実を結んだという実感があります。
で、代表です。
「組織」を重視するトルシエと「個人」を尊重するジーコ。このような比較から語られることの多い今回の代表でしたが、どちらも重要であることは間違いありません。ベースになる約束事を決め、その場その場で選手が臨機応変に判断を下してプレーする、これがチームの理想型だと思います。残念ながら、ジーコの代表はベースを作っては消し、また作っては消すことを繰り返して終わってしまったという印象があります。ジーコ一人の責任ではなく、チーム全体の責任のような気がします。何となく勝てているうちに本番を迎え、無様な負け方をして帰ってきてしまった。
でも、時には無様な負け方をすることも、FIFAに「後退した」といわれることも必要なのではないでしょうか。今回は、必然の「後退」だった、と。札幌は、それはそれは無様でしたが、おかげさまをもって今はだいぶ鑑賞に堪えられるサッカーをしています。代表だからといって後退が許されないというわけでもないでしょう。もちろんその後力強く前進することが必須であるのはいうまでもありません。
次の代表には、まずは最初の2年間ぐらいはじっくりと選手間の共通理解を築くのに費やして欲しいと思います。本番になってバラバラになる…、そんな代表を見るのはもうゴメンです。